概要
ログ管理は「何が起きたか」を記録し、監査証跡はその記録の真正性・完全性を保証します。セキュリティ監視・インシデント調査・法令対応・業務監査のすべてがログに依存しており、「記録がなければ何も証明できない」という状況はセキュリティ上の致命的な欠陥です。SC試験ではログの設計・保全・活用の全体像が問われます。
収集すべきログの種類
システム・ネットワーク系
| ログ種類 | 内容 | 重要イベント |
|---|---|---|
| OSログ(syslog/Windows Event Log) | ログイン・プロセス起動・設定変更 | ログイン失敗・特権使用・ユーザ作成 |
| ファイアウォールログ | 許可・拒否された通信の記録 | 不審なポートスキャン・内部→外部通信 |
| DNSログ | 名前解決の記録 | マルウェアのC2ドメイン問い合わせ |
| VPN・リモートアクセスログ | 接続元IP・ユーザ・時刻 | 通常と異なる時間帯・場所からの接続 |
アプリケーション系
| ログ種類 | 内容 | 重要イベント |
|---|---|---|
| Webサーバログ | HTTPリクエスト・レスポンスコード | 404/403の多発・SQL文字列の混入 |
| 認証ログ | ログイン成功・失敗・MFA操作 | 短時間多数の失敗(ブルートフォース) |
| アプリケーションエラーログ | 例外・エラー内容 | SQLエラー(SQLi試み)・スタックトレース漏洩 |
クラウド系
| ログ種類 | 例 |
|---|---|
| クラウド操作ログ | AWS CloudTrail・Azure Activity Log |
| リソースアクセスログ | S3アクセスログ・Azure Storage Analytics |
| セキュリティイベント | AWS Security Hub・Azure Defender |
監査証跡の要件
取得すべき情報
ログの最小構成要素(5W1H):
- Who(誰が):ユーザID・IPアドレス
- What(何を):操作内容・対象リソース
- When(いつ):タイムスタンプ(UTC推奨)
- Where(どこで):端末・サーバ・アプリ
- Why(なぜ):業務目的(可能な場合)
- How(どうやって):使用した手段・プロトコル
ログの保存期間
| 法的・規制要件 | 保存期間 |
|---|---|
| PCI DSS | 12か月(最新3か月はオンライン) |
| HIPAA(米国医療) | 6年 |
| 電子帳簿保存法(日本) | 最大10年 |
| 一般的なセキュリティ要件 | 最低1年(1〜3年推奨) |
ログの改ざん防止
分離保管
ログは監視対象システムとは別のサーバ・ストレージに保管します。
悪い例:Webサーバのローカルディスクにアクセスログ保存
→ 攻撃者がWebサーバを侵害すると証拠隠滅できる
良い例:別のSyslogサーバ・SIEM・クラウドストレージに転送して保管
ハッシュ値による完全性確認
保存時:ログファイルのSHA-256ハッシュ値を記録
確認時:現在のファイルのハッシュと一致するか確認
不一致:改ざんの疑い → フォレンジック調査
Write-Once ストレージ(WORM)
Write Once Read Many の原則で、追記のみ可能で削除・上書きが不可能なストレージです。
| 技術 | 例 |
|---|---|
| WORM ストレージ | AWS S3 Object Lock(Compliance モード) |
| タイムスタンプサービス | 電子署名付きタイムスタンプで時刻の改ざんを防止 |
| Blockchain | 分散台帳によるログの改ざん検知(実験的) |
SIEMとの連携
ログ収集の流れ:
各システム → syslog/API → ログ転送(Logstash等) → SIEM(Splunk・ArcSight等)
↓
相関分析・アラート→ SOC
SIEM ではログを一元管理し、相関ルールで異常を検知します。ログ管理の設計が不十分だと SIEM を導入しても効果が限定的です。
SC試験での頻出ポイント
- ログを分離保管する理由:攻撃者によるログの改ざん・削除(証拠隠滅)を防ぐ
- タイムスタンプをUTCで記録する理由:タイムゾーンが異なるシステムのログを正確に時刻順で結合するため
- 監査証跡の完全性確認方法:ハッシュ値の記録・WORMストレージ・電子タイムスタンプ
- ログの保存期間の根拠:法的要件(PCI DSS・個人情報保護法等)と組織のポリシー
- ログが改ざんされた場合の問題:インシデント調査が困難になり、攻撃者の特定・訴追が不可能になる
よくある誤問・ひっかけパターン
誤り① 「ログはシステム障害の調査専用」→ 誤。セキュリティ監視・インシデント調査・法令対応・業務監査など幅広い用途があります。
誤り② 「ログを長期保存するとコストが増えるだけでセキュリティ上の意義はない」→ 誤。APT攻撃は潜伏期間が長期に及ぶため(平均200日以上)、古いログが調査に不可欠なケースがあります。
誤り③ 「ハッシュ値が保存されていればログは改ざんできない」→ 誤。ハッシュ値は改ざんを「検知」するためのもので、「防止」ではありません。防止にはWORMストレージが必要です。
関連用語
- SOCとSIEM — ログをSIEMに集約してSOCが監視
- デジタルフォレンジクスと証拠保全 — ログの証拠としての利用
- ISMS(ISO/IEC 27001) — ログ管理はISMSの管理策に含まれる
重要キーワード
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| 監査証跡 | 「誰が・いつ・何をしたか」を証明できるログの記録 |
| WORM | Write Once Read Many。追記のみ可能で削除・上書き不可のストレージ |
| タイムスタンプ | ログの時刻を信頼できる形で記録・保証する仕組み |
| syslog | ログを集中管理サーバに転送するためのUNIX標準プロトコル |
| ログの正規化 | 異なる形式のログを統一形式に変換してSIEMで分析可能にする |
| 相関分析 | 複数のログを組み合わせてシングルのイベントでは見えない攻撃を検知する |