概要
IDS(Intrusion Detection System:侵入検知システム)・IPS(Intrusion Prevention System:侵入防止システム)・WAF(Web Application Firewall)は、ファイアウォールだけでは防げない高度な攻撃を検知・防止する装置です。SC試験では3者の違い・配置設計・検知方式の種類が頻出です。
IDS(侵入検知システム)
役割
ネットワークトラフィックやホストのログを監視し、不審な活動を検知してアラートを発報します。通信は遮断しません。
配置方式
| 方式 | 説明 |
|---|---|
| NIDS(ネットワーク型) | ネットワークトラフィックをスニファで監視。タップやミラーポートを使用 |
| HIDS(ホスト型) | 個々のサーバにエージェントをインストールしてログ・プロセスを監視 |
タップ配置(IDSの典型):
インターネット → ルータ → [タップ] → ファイアウォール → 内部ネットワーク
↓
IDS(コピーされたトラフィックを解析)
タップ配置なので、IDSの処理が遅くても通信速度に影響しません。
IPS(侵入防止システム)
役割と配置
インラインで配置し、不審な通信をリアルタイムに遮断します。
インライン配置(IPSの典型):
インターネット → ルータ → IPS → ファイアウォール → 内部ネットワーク
↑
ここで通信を遮断・許可
IPSのメリット・デメリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 攻撃をリアルタイムに遮断できる |
| デメリット | 誤検知(False Positive)で正常通信を遮断するリスク(サービス影響) |
| デメリット | インラインなので高可用性設計が必要(障害時の迂回路) |
検知方式の比較
| 方式 | 仕組み | 長所 | 短所 |
|---|---|---|---|
| シグネチャ検知 | 既知の攻撃パターン(シグネチャ)と照合 | 誤検知が少ない・高速 | 未知の攻撃を検知できない(ゼロデイに無力) |
| アノマリ検知 | 正常な通信のベースラインを学習し、逸脱を検知 | 未知の攻撃を検知できる | 誤検知が多い・ベースライン学習が必要 |
| ステートフル検知 | 通信のセッション状態を追跡して異常を判定 | フラグメント化攻撃を検知 | 状態管理に多くのリソースが必要 |
WAF(Web Application Firewall)
ファイアウォール・IPSとの違い
| 装置 | 守る対象 | 動作レイヤ |
|---|---|---|
| ファイアウォール | ネットワーク境界 | L3〜L4(IP・TCP/UDP) |
| IPS | ネットワーク全般 | L3〜L7(ペイロード解析) |
| WAF | Webアプリケーション | L7(HTTPリクエスト・レスポンス) |
WAFが検知・防御する攻撃
- SQLインジェクション
- XSS(クロスサイトスクリプティング)
- CSRF
- OWASP Top 10 に含まれる Webアプリ脆弱性
WAFの配置形態
| 形態 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| リバースプロキシ型 | WAFがWebサーバの前段に位置 | 最も一般的 |
| クラウド型(CDN統合) | CDN事業者がWAF機能を提供 | AWS WAF・Cloudflare |
| エージェント型 | Webサーバにモジュールを組み込む | mod_security |
WAFの限界
WAFはバイパス技術が存在します(エンコード変換・大文字小文字混在等)。WAFに頼りすぎず、アプリ側でも入力値検証・プリペアドステートメントを実施することが重要です。
SC試験での頻出ポイント
- IDSとIPSの最大の違い:IDS は検知のみ(アラート)、IPS は検知+遮断(インライン配置)
- シグネチャとアノマリの使い分け:シグネチャは既知攻撃、アノマリは未知攻撃(ただし誤検知が多い)
- タップ配置とインライン配置の違い:タップはコピーを解析(通信に影響なし)、インラインは通信経路上に挿入
- WAFがSQLiを防げる理由とファイアウォールが防げない理由:WAFはHTTPの中身(クエリ文字列・ボディ)まで解析するため
- False Positive(誤検知)の問題:IPSの誤検知は正常通信の遮断を引き起こしサービス停止につながる
よくある誤問・ひっかけパターン
誤り① 「IPSを導入すればIDSは不要」→ 誤。IPSが誤検知でブロックしたトラフィックの分析や、IPSを迂回した通信の検知にIDSが役立ちます。
誤り② 「WAFを導入すればXSSは完全に防げる」→ 誤。WAFにはバイパス手法があり、アプリ側での対策(出力エスケープ・CSP)との多層防御が必要です。
誤り③ 「シグネチャ検知は誤検知が多い」→ 誤。シグネチャ検知は誤検知が少ないことが特徴です。誤検知が多いのはアノマリ検知です。
関連用語
- ファイアウォールとDMZ — 境界防御との役割分担
- SOCとSIEM — IDSのアラートをSIEMで集約・分析
- APIセキュリティ — APIゲートウェイとWAFの連携
重要キーワード
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| IDS | 侵入検知システム。不審な通信を検知してアラートを発報 |
| IPS | 侵入防止システム。インライン配置で不審な通信を遮断 |
| WAF | Webアプリ特化のファイアウォール。SQLi・XSS等を検知・防御 |
| シグネチャ検知 | 既知の攻撃パターンと照合する検知方式 |
| アノマリ検知 | 正常なベースラインからの逸脱を検知する方式 |
| False Positive | 正常な通信を攻撃と誤判定すること(誤検知) |