概要
無線LANは有線と異なり電波が空間を伝播するため、物理的な接続なしに盗聴・接続試行が可能です。SC試験では暗号化方式の変遷(WEP→WPA→WPA2→WPA3)・攻撃手法(PMKID攻撃・Evil Twin)・企業向け認証(802.1X/EAP)が頻出です。
暗号化方式の変遷
| 方式 | 暗号化 | 認証 | 状態 |
|---|---|---|---|
| WEP | RC4(64/128ビット) | 共有キー | 廃止(数秒〜数分で解読可能) |
| WPA | RC4+TKIP | PSK/802.1X | 廃止推奨(TKIPに脆弱性) |
| WPA2 | AES-CCMP | PSK/802.1X | 現在も広く使用。KRACK攻撃に脆弱 |
| WPA3 | AES-CCMP(個人)/GCMP-256(企業) | SAE(個人)/802.1X(企業) | 現在の推奨 |
WEPが廃止された理由
WEPの問題点:
1. RC4の鍵生成が脆弱(24ビットのIVは使い回しが発生)
2. IVが重複したパケットを収集するとWEPキーを解析可能
3. チェックサム(CRC-32)は改ざん検知として機能しない
→ 2004年にIEEEが廃止。現在は数秒で解読可能
WPA3の改善点
個人向け(WPA3-Personal):SAE(Simultaneous Authentication of Equals)
WPA2-PSK(Pre-Shared Key)に代わる認証方式です。
| 比較項目 | WPA2-PSK | WPA3-SAE |
|---|---|---|
| 鍵交換 | 4-wayハンドシェイク(PSKに依存) | Dragonfly(Diffie-Hellmanベース) |
| オフライン辞書攻撃 | 可能(ハンドシェイクをキャプチャして総当り) | 困難(推測1回ごとにサーバとの通信が必要) |
| 前方秘匿性 | なし | あり(SAEはPFS) |
| PMKID攻撃 | 脆弱 | 対策済み |
企業向け(WPA3-Enterprise)
192ビット安全性モードで政府・金融向けに高い暗号強度を提供します。
PMF(Protected Management Frames)
WPA3では必須化。管理フレーム(認証解除・関連解除)を暗号化して、DeauthentIcation攻撃を防止します。
主な攻撃手法
KRACK攻撃(Key Reinstallation Attack)
WPA2の4-wayハンドシェイクの欠陥を悪用してセッション鍵を再インストールさせる攻撃です(2017年発見)。
対策:
- WPA3への移行
- OSのパッチ適用(主要OSは修正済み)
- VPNによる通信の暗号化
Evil Twin(悪魔の双子)攻撃
攻撃フロー:
1. 攻撃者が正規APと同一のSSIDを持つ偽APを設置
2. 偽APからDeauthフレームを送って正規APからクライアントを切断
3. クライアントが偽APに接続
4. 攻撃者がMITM(中間者)として通信を盗聴・改ざん
対策:
- WPA3-EnterpriseとWPA2-Enterprise(802.1X):APの証明書を検証するため偽APを検知可能
- PMF:Deauthフレームの偽造防止
PMKID攻撃(WPA2)
ハンドシェイクのキャプチャなしに、ビーコンフレームからPMKIDを取得してオフライン辞書攻撃が可能です。WPA3のSAEはこれに対策済みです。
企業向け認証(WPA2/WPA3-Enterprise)
802.1X とEAP
802.1X はポートベースのネットワークアクセス制御です。無線LANではEAP(Extensible Authentication Protocol)を使ってRADIUSサーバで認証します。
認証の流れ:
クライアント → 認証要求 → AP(Authenticator)→ RADIUS サーバ(認証サーバ)
↓
許可/拒否
主要なEAP方式
| 方式 | 特徴 | 認証情報 |
|---|---|---|
| EAP-TLS | 相互証明書認証。最も安全 | クライアント証明書 + サーバ証明書 |
| PEAP | サーバ証明書でトンネル作成後、内部でMSCHAPv2等 | ユーザ名・パスワード |
| EAP-TTLS | PEAPと同様だが内部プロトコルが柔軟 | ユーザ名・パスワード |
EAP-TLSが最も安全ですが、全クライアントに証明書を配布する必要があります。
SC試験での頻出ポイント
- WEPが廃止された理由:RC4のIV再利用によりWEPキーの解析が数秒〜数分で可能
- WPA3-SAAEの利点:オフライン辞書攻撃への耐性・前方秘匿性
- 802.1XとRADIUSの関係:802.1XはEAPでクライアント認証、RADIUSがバックエンドの認証サーバとして機能
- Evil Twin攻撃の対策:WPA2-Enterprise/WPA3-Enterpriseでサーバ証明書を検証することで偽APを検知
- PMFの目的:管理フレームを保護してDeauthentication攻撃を防止。WPA3では必須
よくある誤問・ひっかけパターン
誤り① 「WPA2は現在安全に使える」→ 条件付き。WPA2はKRACK・PMKID攻撃の脆弱性があり、WPA3への移行が推奨されます。パッチ適用とVPN使用で暫定対応は可能です。
誤り② 「MACアドレスフィルタリングは無線LANのセキュリティ対策として有効」→ 弱い対策。MACアドレスはスニファで観察し偽装(MACスプーフィング)することが容易で、強固な対策にはなりません。
誤り③ 「SSIDを非公開(ステルス)にすれば安全」→ 誤。SSIDはプローブリクエスト等で検出可能であり、セキュリティ対策にはなりません。
関連用語
- TLS(Transport Layer Security) — 無線LAN上での通信はさらにTLSで保護する
- LDAP・Active Directory — 802.1XのバックエンドとしてAD RADIUS(NPS)を使用
- VPN(IPsec / SSL-VPN) — 公衆無線LANでの安全な通信確保
重要キーワード
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| WEP | 廃止された無線LAN暗号化方式。RC4の脆弱な実装で数秒〜数分で解読可能 |
| WPA3-SAE | WPA3の個人向け認証方式。オフライン辞書攻撃耐性とPFSを提供 |
| 802.1X | ポートベースのネットワークアクセス制御。EAPとRADIUSで認証 |
| Evil Twin | 正規APと同一SSIDの偽APを設置して通信を傍受する攻撃 |
| PMF | Protected Management Frames。管理フレームを暗号化してDeauth攻撃を防止 |
| KRACK | WPA2の4-wayハンドシェイクの脆弱性を悪用する攻撃(2017年) |