午前I問題

公開鍵暗号方式に関する記述として、適切なものはどれか。

ア)RSA暗号において、公開鍵で暗号化したデータは、同じ公開鍵を用いて復号できる。

イ)公開鍵暗号方式は共通鍵暗号方式よりも処理が高速であるため、大容量データの暗号化に適している。

ウ)RSA暗号の安全性は、大きな整数の素因数分解が計算上困難であることに基づいている。

エ)楕円曲線暗号(ECC)は、RSAと同等のビット長の鍵を使用した場合、RSAよりも安全性が低い。

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正解:

解説: RSAの安全性は「大きな整数を素因数分解することが計算上困難」という数学的問題に基づいています。ア)誤り。公開鍵で暗号化したデータは対応する秘密鍵でのみ復号できます。公開鍵による復号は不可能です。イ)誤り。公開鍵暗号は共通鍵暗号より処理が遅く、大容量データには不向きです。実際には「ハイブリッド暗号方式」で共通鍵の配送にのみ公開鍵暗号を使います。エ)誤り。ECCはRSAより短い鍵長で同等の安全性を実現します(256bit ECC ≈ 3072bit RSA)。

方式安全性の根拠特徴
RSA素因数分解困難性鍵長2048bit以上を推奨
ECC楕円曲線離散対数問題短い鍵長で高い安全性

午前II問題

X.509証明書の失効確認方法に関する記述として、適切なものはどれか。

ア)CRL(証明書失効リスト)は、失効した証明書の情報をリアルタイムに提供するプロトコルであり、証明書のシリアル番号を指定してCAに問い合わせる。

イ)OCSP(Online Certificate Status Protocol)は証明書のシリアル番号をOCSPレスポンダに問い合わせることで、個別の証明書の失効状態をリアルタイムに確認できる。

ウ)OCSP Staplingは、TLSクライアントがCAに対して直接OCSPリクエストを送信し、CAから直接応答を受信する方式である。

エ)CRLを利用する場合、クライアントは証明書を検証するたびに常にCAからCRLをダウンロードしなければならない。

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正解:

解説: OCSPはOCSPレスポンダ(CA等が運用)に証明書のシリアル番号を送って失効状態を個別照会する方式です。CRLに比べリアルタイム性が高く、通信量も少ない点が特長です。ア)誤り。CRLはリアルタイムプロトコルではなく、CAが定期的に発行・配布するリスト形式です。問い合わせではなく取得して照合します。ウ)誤り。OCSP StaplingはTLSサーバがOCSP応答を事前取得してハンドシェイク時にクライアントへ提示する方式です。クライアントがCAに直接問い合わせる必要がなく、CAへの負荷も軽減されます。エ)誤り。CRLはキャッシュ可能であり、次のCRL発行予定日(nextUpdate)までキャッシュを利用するため、毎回ダウンロードする必要はありません。

方式リアルタイム性通信量特徴
CRL低(定期配布)シンプル。失効後すぐに反映されない
OCSP個別照会。CAへの問い合わせが増える
OCSP Staplingサーバが事前取得。CAへの負荷を軽減

午後問題

A社はECサイトと複数の社内Webシステムを運用している。セキュリティ担当のE氏が証明書管理の実態を調査したところ、以下の事象が判明した。

(事象1)一部の社内WebシステムがCA署名なしの自己署名証明書を使用しており、社員のブラウザに「この接続は安全ではありません」という警告が常時表示されている。社員は警告を無視して利用を継続していた。

(事象2)メール受信ログの解析中に、a-company.com(A社の正規ドメインは acompany.com)というドメインでDV(ドメイン認証)証明書を取得したフィッシングサイトへのアクセスが複数記録されていた。アクセスしたユーザのブラウザにはHTTPS通信を示す鍵アイコンが表示されており、正規サイトと誤認した可能性がある。

(事象3)ECサイト用のTLS証明書の有効期限が72時間後に迫っていることが判明したが、更新作業は未着手であった。証明書は外部の認証局から発行された有効期間1年のOV(組織認証)証明書である。

設問1

事象2について、フィッシングサイトがDV証明書を取得していた場合にブラウザの鍵アイコンが表示される理由を説明し、EV(拡張検証)証明書とDV証明書の審査内容の違いを踏まえた上で、ユーザが取るべきフィッシング対策を40字以内で答えよ。

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正解例(理由): DV証明書はドメインの所有確認のみで発行されるため、フィッシングサイトでも取得可能であり、HTTPS暗号化が有効になることでブラウザは鍵アイコンを表示する。鍵アイコンは通信の暗号化を示すものであり、サイトの正当性を保証するものではない。

正解例(対策): URLのドメイン名を目視で確認し、正規ドメインと一致するかを検証する。

解説: DVとEVの審査内容の違いは以下の通りです。DV証明書はドメイン所有者であることをDNSレコードやファイル配置で確認するだけで発行されます。EV証明書は組織の法人実在確認・登記情報照合・電話による確認など厳格な審査が必要です。しかし現在の主要ブラウザはEV証明書であっても組織名をアドレスバーに目立つ形で表示しなくなったため、EV証明書だけを信頼指標にすることは推奨されません。フィッシング対策の本質はURLのドメイン名確認です。

採点基準(10点):

  • 「DVはドメイン所有確認のみで発行可能」+「フィッシングサイトもHTTPS化できる」(4点)
  • 「鍵アイコン=暗号化の証明であり正当性の保証ではない」(3点)
  • 「URLのドメイン名を目視確認する」という具体的な対策(3点)

設問2

事象3について、ECサイトのTLS証明書が有効期限切れになった場合の利用者への影響を具体的に述べよ。また、証明書の期限切れを組織として防止するための管理策を2つ挙げよ。

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正解例(影響): 利用者のブラウザに「証明書エラー」または「NET::ERR_CERT_DATE_INVALID」が表示され、ECサイトへのアクセスが遮断または強い警告表示となる。HSTSを設定している場合は接続自体がブロックされる。結果として、顧客の信頼失墜・売上機会の損失・ブランドイメージの低下が生じる。

正解例(管理策):

  1. 全証明書の有効期限・発行CA・対象ドメインをCMDB(構成管理データベース)または証明書管理ツールで一元管理し、期限の60日前・30日前・7日前に自動アラートを発報する監視体制を設ける。
  2. Let’s EncryptとACMEプロトコル(Certbot等)、またはクラウドプロバイダの証明書管理サービス(AWS ACMなど)を活用して証明書の自動更新(Auto-renewal)を設定し、人手による更新作業を排除する。

解説: 証明書の有効期限切れはブラウザが通信を拒否する深刻なインシデントです。特にECサイトではHSTSやMTAの設定によりメール送受信にも影響が波及する場合があります。IPAのガイドラインでも証明書ライフサイクル管理は組織的なセキュリティ管理の基本とされています。Let’s Encryptは有効期間が90日と短いため自動更新前提の設計ですが、商用証明書(有効期間1年)でも自動化ツールの活用が推奨されます。

採点基準(12点):

  • 影響:「ブラウザエラー表示/接続遮断」(3点)+「HSTS環境でのブロック」(2点)+「信頼失墜・売上損失」(2点)
  • 管理策1:「証明書の一元管理」+「期限前アラート発報」(2点)
  • 管理策2:「自動更新(ACME/Certbot/ACM等の具体例)」(3点)

重要キーワード

用語説明
PKI(公開鍵基盤)CA・RA・証明書・CRL等で構成されるデジタル証明書の発行・管理基盤
RSA素因数分解の計算困難性に基づく公開鍵暗号方式。鍵長2048bit以上が推奨
ECC(楕円曲線暗号)楕円曲線上の離散対数問題に基づく暗号。短い鍵長でRSAと同等の安全性を実現
CRL(証明書失効リスト)CAが定期的に発行する失効証明書のリスト。即時性に欠けるが仕組みがシンプル
OCSP StaplingTLSサーバがOCSP応答を事前取得してハンドシェイク時にクライアントへ提示する方式
DV/OV/EV証明書証明書の審査レベルによる分類。DV:ドメイン確認のみ、OV:組織確認、EV:厳格な実在審査
HSTS(HTTP Strict Transport Security)ブラウザにHTTPS接続のみを強制させるセキュリティヘッダ。証明書エラー時に接続をブロック

まとめ

  • 午前I視点: 公開鍵暗号は「公開鍵で暗号化・秘密鍵で復号」の非対称性が基本。RSAは素因数分解、ECCは楕円曲線離散対数問題が安全性の根拠であることを押さえる
  • 午前II視点: CRL・OCSP・OCSP Staplingの違いはリアルタイム性と通信負荷のトレードオフ。OCSP Staplingはサーバ側がキャッシュしてクライアントに提示する点が特徴
  • 午後視点: 証明書管理は「鍵アイコン=安全の誤認」「期限切れによるサービス停止」「自動更新の必要性」の3点セットで出題される。DVとEVの審査内容の差異とフィッシング対策をセットで答えられるよう準備する