午前I問題
ロードバランサにおけるTLS終端(SSL Offloading)の説明として、適切なものはどれか。
ア)ロードバランサがクライアントからのTLS通信を復号し、バックエンドサーバへは負荷分散のみを行い暗号化を一切行わない方式を指す固有の用語である。
イ)ロードバランサがクライアントとのTLSハンドシェイクおよび暗号化・復号処理を代行することで、バックエンドサーバのCPU負荷を軽減する仕組みである。
ウ)ロードバランサが証明書の代わりにワンタイムパスワードを発行し、クライアント認証を簡略化する仕組みである。
エ)ロードバランサがバックエンドサーバのIPアドレスを暗号化し、外部から秘匿する仕組みである。
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正解: イ)
解説:
- ア)不正解。TLS終端後にバックエンドへ暗号化せず転送するかどうかは運用上の選択肢の一つであり、それ自体が用語の定義ではない。
- イ)正解。SSLオフロード(TLS終端)は、ロードバランサがクライアントとのTLSハンドシェイクや暗号化・復号処理を一手に引き受けることで、バックエンドサーバ群のCPU負荷(特に鍵交換や暗号化処理)を軽減する仕組みである。
- ウ)不正解。ワンタイムパスワードの発行は多要素認証の話であり、TLS終端の説明とは無関係。
- エ)不正解。IPアドレスの暗号化という概念自体が誤りであり、TLS終端の目的と異なる。
午前II問題
ロードバランサでTLS終端を行い、バックエンドサーバとの通信を暗号化しない平文(HTTP)構成にした場合のセキュリティ上のリスクとして、最も適切なものはどれか。
ア)バックエンドサーバがロードバランサからの接続を拒否するようになり、可用性が低下する。
イ)ロードバランサとバックエンドサーバ間のネットワークセグメント内に侵入された場合、通信内容やCookie等の機微情報が盗聴・改ざんされる危険がある。
ウ)TLS証明書の自動更新が不可能になり、証明書の有効期限切れが頻発する。
エ)バックエンドサーバの負荷が増加し、TLS終端を行わない場合よりも処理性能が低下する。
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正解: イ)
解説:
- ア)不正解。プロトコルの違い(HTTP/HTTPS)だけで接続が拒否されることは通常なく、可用性低下の直接的な理由にはならない。
- イ)正解。TLS終端後にバックエンドとの通信を平文化すると、内部ネットワークに侵入した攻撃者やスニッフィングによって、認証情報・セッションCookie・個人情報等が盗聴・改ざんされるリスクがある。内部ネットワークを「安全」と過信する設計の典型的な弱点である。
- ウ)不正解。証明書更新の自動化はTLS終端方式とは独立した運用課題であり、平文化と直接関係しない。
- エ)不正解。TLS終端によりバックエンドの暗号化処理負荷はむしろ軽減される方向であり、性能低下という記述は逆である。
午後問題
D社ではクラウド上にロードバランサを配置し、TLS終端を行った上でバックエンドの複数のWebサーバへHTTP(平文)で振り分ける構成を採用していた。ある監査で、ロードバランサとWebサーバが同一のVPC内の共有サブネットに配置されており、同じサブネットには開発用の踏み台サーバも同居していることが判明した。監査担当者は「万一踏み台サーバが侵害された場合、バックエンド通信が盗聴される可能性がある」と指摘した。
設問1
この構成における最大のセキュリティリスクを、40字以内で述べよ。
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正解例: 踏み台サーバ侵害時に同一サブネット内で平文のバックエンド通信が盗聴され、認証情報等が漏えいする。
解説・採点基準(計15点):
| 採点項目 | キーワード | 配点 |
|---|---|---|
| 侵害の起点 | 踏み台サーバの侵害を起点とする言及 | 4点 |
| 平文通信の弱点 | バックエンド通信が暗号化されていない(平文)点 | 6点 |
| 被害内容 | 盗聴・情報漏えい(Cookie、認証情報等)への言及 | 5点 |
同一サブネットに信頼度の異なるサーバを混在させる設計は、内部ネットワークを一枚岩の「安全な領域」とみなす暗黙の前提に依存しており、一台の侵害が横展開(ラテラルムーブメント)による被害拡大につながる典型例である。
設問2
この事案を踏まえてD社が実施すべき対策を、通信経路とネットワーク構成の両観点からそれぞれ30字以内で述べよ。
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正解例:
通信経路:ロードバランサからバックエンドまでの通信もTLSで暗号化する(End-to-End暗号化)。
ネットワーク構成:Webサーバ用サブネットと踏み台サーバ用サブネットを分離する。
解説・採点基準(計15点):
| 採点項目 | キーワード | 配点 |
|---|---|---|
| 通信経路の対策 | バックエンド通信のTLS暗号化(再暗号化・End-to-End) | 7点 |
| ネットワーク構成の対策 | サブネット分離・セキュリティグループ/ACLによるアクセス制限 | 8点 |
バックエンドまでTLSを継続する構成は「TLSパススルー」や「TLS再暗号化(Re-encryption)」と呼ばれる。あわせて用途の異なるサーバ群をサブネット単位で分離し、ファイアウォールやセキュリティグループで通信を最小権限に制限することが望ましい。
重要キーワード
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| TLS終端(SSL Offloading) | ロードバランサ等がTLSハンドシェイク・暗号化処理を代行する仕組み |
| TLSパススルー | ロードバランサがTLSを終端せずバックエンドまで暗号化を維持する方式 |
| Re-encryption(再暗号化) | ロードバランサで一度復号した後、バックエンドへの通信を別途TLSで再暗号化する方式 |
| ラテラルムーブメント | 侵害した1台の端末・サーバを起点に内部ネットワークで侵害範囲を拡大する攻撃行動 |
| セキュリティグループ | クラウド環境でインスタンス単位に適用する仮想ファイアウォール機能 |
| ファイアウォール | ネットワーク境界や内部セグメント間の通信を制御するセキュリティ機器 |
まとめ
- 午前I視点: TLS終端(SSLオフロード)がバックエンドの処理負荷軽減を目的とする仕組みである点を押さえる
- 午前II視点: TLS終端後のバックエンド平文化がもたらす盗聴・改ざんリスクを正確に理解する
- 午後視点: 内部ネットワークの信頼を過信した設計の弱点を見抜き、End-to-End暗号化とサブネット分離を対策として論述できるようにする