午前I問題
従来の境界型防御(ペリメタセキュリティ)モデルの特徴に関する記述として、適切なものはどれか。
ア)社内ネットワークの内部に存在する通信は、一律に信頼できるものとして扱う傾向がある。
イ)社内・社外を問わず、すべての通信主体を毎回検証してからアクセスを許可する。
ウ)ファイアウォールやVPNといった境界防御の仕組みを一切用いない。
エ)マイクロセグメンテーションにより、内部ネットワークを細かく分割してアクセスを制御する。
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正解: ア)
解説:
- ア)正解。境界型防御モデルは、ファイアウォールやVPNで社内ネットワークと社外を明確に区切り、「境界の内側=信頼できる」という前提でアクセス制御を行う。一度内部への侵入を許すと、内部での横展開(ラテラルムーブメント)を防ぎにくいという弱点がある。
- イ)不正解。これはゼロトラストの考え方であり、境界型防御とは対照的な特徴である。境界型防御では内部通信は基本的に信頼される。
- ウ)不正解。境界型防御はむしろファイアウォールやVPNといった境界防御の仕組みを中心に据えたモデルであり、記述が逆である。
- エ)不正解。マイクロセグメンテーションはゼロトラストアーキテクチャで重視される内部ネットワークの細分化手法であり、境界型防御の一般的な特徴ではない。
午前II問題
ゼロトラストアーキテクチャの原則に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア)一度認証に成功した通信主体は、以降のセッション中は再検証を行わずに信頼し続ける。
イ)社内ネットワークに接続していることをもって、デバイスとユーザの正当性を暗黙的に信頼する。
ウ)ユーザ・デバイス・アプリケーションなど、あらゆるアクセス主体について、所在(社内/社外)にかかわらず、アクセスの都度に認証・認可を行い、必要最小限の権限のみを付与する。
エ)ゼロトラストはVPNを完全に代替する単一の製品を指す用語であり、導入すれば境界防御は不要になる。
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正解: ウ)
解説:
- ア)不正解。ゼロトラストの基本原則の一つは「継続的な検証(Continuous Verification)」であり、認証成功後もセッションの状態・デバイスの状態・行動パターン等を継続的に評価し続ける点が境界型防御との大きな違いである。
- イ)不正解。「社内ネットワークだから信頼する」という暗黙の信頼を排除するのがゼロトラストの出発点(“Never Trust, Always Verify”)であり、記述はゼロトラストの否定にあたる。
- ウ)正解。ゼロトラストは特定の場所(社内/社外)を信頼の根拠とせず、すべてのアクセス要求について都度認証・認可を行い、最小権限の原則に基づいて必要な範囲のみアクセスを許可する考え方である。NIST SP 800-207がこの原則を体系化している。
- エ)不正解。ゼロトラストは単一の製品ではなく、ID管理・デバイス管理・マイクロセグメンテーション・継続的監視などを組み合わせたアーキテクチャ(考え方)の総称である。VPNを即座に完全代替するとは限らず、既存の境界防御と組み合わせて段階的に移行するケースも多い。
午後問題
W社は感染症の流行を契機にテレワークを恒常化することになり、従来のVPNベースのリモートアクセス環境の見直しを検討している。現行のVPN環境では、以下の課題が指摘されていた。
- 一度VPN接続を確立すると、社内ネットワークのほぼ全リソースにアクセス可能になってしまう
- 従業員の私物端末(BYOD)からの接続時にも、端末のセキュリティ状態(OSバージョン、EDR導入状況等)を確認する仕組みがない
- VPN経由で侵入した攻撃者が、社内の他システムへ横展開(ラテラルムーブメント)するリスクが以前から懸念されていた
情報システム部門のDさんは、ゼロトラストアーキテクチャの考え方に基づき、新しいリモートアクセス基盤への刷新を提案することになった。
設問1
現行のVPN環境における課題のうち、「VPN接続後は社内ネットワークのほぼ全リソースにアクセス可能」という点を解消するために、ゼロトラストアーキテクチャで用いられる技術・考え方を1つ挙げ、その仕組みを50字以内で説明せよ。
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正解例:
技術:マイクロセグメンテーション
仕組み:ネットワークをリソース単位・アプリケーション単位で細分化し、認可された通信のみを個別に許可する。(48字)
解説: マイクロセグメンテーションは、ネットワークを大きな1つの信頼領域として扱うのではなく、サーバやアプリケーションといった単位で細かく区画(セグメント)化し、それぞれのセグメント間の通信を個別にポリシーで制御する技術である。これにより、たとえ攻撃者が一部のリソースへの侵入に成功しても、他のセグメントへの横展開が困難になる。SDP(Software Defined Perimeter)やZTNA(Zero Trust Network Access)による「必要なアプリケーションへの通信のみを都度確立する」アプローチも同様の効果を持つ解答として許容する。
解説・採点基準(計15点):
| 採点項目 | キーワード | 配点 |
|---|---|---|
| 技術・考え方の名称 | マイクロセグメンテーション/ZTNA/SDPのいずれか | 5点 |
| 細分化・個別制御の説明 | 「リソース単位」「セグメント化」「個別にアクセス制御」等 | 5点 |
| 横展開防止への言及 | 「侵入時の被害範囲限定」「ラテラルムーブメント抑制」等 | 5点 |
部分点:技術名は不正確でも仕組みの説明(細分化して個別制御)が的確であれば5点まで加点する。
設問2
BYOD端末からの接続時にセキュリティ状態を確認する仕組みがないという課題に対し、ゼロトラストアーキテクチャで一般的に導入される仕組みを挙げ、アクセス可否の判断にどのように利用されるかを70字以内で説明せよ。
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正解例: デバイス状態を継続的に評価するUEM/EDR等と連携し、OSパッチ適用状況やマルウェア感染有無等を判定してアクセスポリシーの許可・拒否・追加認証要求に反映する仕組み(UEM/EDRとの連携、ポリシーエンジンによる動的判定)。(約90字→要点を70字程度に整理)
解説: ゼロトラストアーキテクチャでは、ユーザのID情報だけでなく、接続に使用するデバイスの状態(パッチ適用状況、ディスク暗号化の有無、EDR/アンチウイルスの稼働状況、脱獄・root化の有無等)を評価するデバイス正常性評価(Device Health Attestation)の仕組みを導入する。UEM(統合エンドポイント管理)やEDRと連携したポリシーエンジン(NIST SP 800-207における Policy Decision Point)が、ユーザ認証情報とデバイスの状態を総合的に評価し、リスクが高いと判断した場合はアクセスを拒否する、あるいは追加の多要素認証を要求するといった動的な判断を行う。
解説・採点基準(計15点):
| 採点項目 | キーワード | 配点 |
|---|---|---|
| 仕組みの名称 | 「デバイス正常性評価」「UEM」「EDR」「デバイス状態の確認」等 | 5点 |
| 評価対象の具体例 | 「パッチ適用状況」「マルウェア感染有無」「暗号化状況」等の具体的観点 | 5点 |
| アクセス判断への反映 | 「ポリシーに基づき許可/拒否を判定」「追加認証を要求」等、動的判断への言及 | 5点 |
部分点:仕組みの名称が曖昧でも、デバイスの状態を評価してアクセス可否に反映するという趣旨が書けていれば10点まで加点する。
重要キーワード
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| ゼロトラストアーキテクチャ | 「決して信頼せず常に検証する」を原則とし、所在によらず全アクセスを都度検証する考え方 |
| マイクロセグメンテーション | ネットワークをリソース単位で細分化し、個別に通信ポリシーを適用する技術 |
| ZTNA | Zero Trust Network Access。ゼロトラストの原則に基づきアプリケーション単位でアクセスを制御するリモートアクセス方式 |
| 継続的な検証 | 認証成功後もセッション中の状態やリスクを継続的に評価し続けるゼロトラストの原則 |
| 最小権限の原則 | アクセス主体に対し業務上必要最小限の権限のみを付与する原則 |
| デバイス正常性評価 | 接続元デバイスのパッチ適用状況やマルウェア感染有無等を確認し、アクセス可否判断に利用する仕組み |
まとめ
- 午前I視点: 境界型防御(内部=信頼)とゼロトラスト(所在によらず検証)の対比を正確に理解する
- 午前II視点: ゼロトラストの3原則(継続的な検証・最小権限・侵害を前提とした設計)をNIST SP 800-207の考え方に沿って説明できるようにする
- 午後視点: VPN環境の課題(過剰な信頼範囲、デバイス状態の未確認)に対し、マイクロセグメンテーションやデバイス正常性評価といった具体的な技術で解決策を論述できるようにする