概要
PAM(Privileged Access Management:特権アクセス管理)は、システム管理者・DBA・クラウド管理者などが持つ強力な権限(特権)の利用を厳格に制御・監視・記録する仕組みです。PIM(Privileged Identity Management)はAzure AD(Entra ID)での特権ロール管理を指すこともあります。SC試験では内部不正対策・JIT(Just-In-Time)権限付与・セッション管理が頻出です。
特権アクセスのリスク
なぜ特権は危険か
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 内部不正 | 管理者が意図的にデータを窃取・改ざん |
| 外部攻撃者による悪用 | 特権アカウントを奪取されると全システムが制御される |
| 資格情報の共有 | rootパスワードを複数人で共有すると責任の所在が不明 |
| 不必要な常時特権 | 普段使わない強力な権限が常に有効 |
特権アカウントの種類
| 種類 | 例 |
|---|---|
| OSの特権アカウント | root(Linux)、Administrator(Windows) |
| サービスアカウント | バッチ処理用、アプリのDB接続用 |
| クラウド特権 | AWS AdministratorAccess、Azure Global Admin |
| ネットワーク機器 | ルータ・スイッチのenableアカウント |
PAMの主要機能
特権資格情報の保管(Vault)
PAMなし:
ファイルにrootパスワードを記載 → 誰でも読める → 漏洩リスク大
PAMあり(Vault):
特権パスワードをPAMが暗号化して一元管理
ユーザはVaultにログインして一時的なパスワードを払い出してもらう
JIT(Just-In-Time)アクセス
必要なときだけ・必要な時間だけ特権を付与する原則です。
JITフロー:
1. 管理者がPAMにアクセス申請(理由・期間を入力)
2. 上長が承認
3. PAMが一時的な特権資格情報を払い出し(例:1時間有効)
4. 作業完了後に権限が自動失効
5. PAMがセッション全体を記録
セッション管理・録画
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| セッション録画 | 特権セッション中の全操作を動画・テキストで記録 |
| キーストロークログ | 実行したコマンドを全て記録 |
| リアルタイム監視 | 不審な操作を検知してアラート・セッション終了 |
| 証跡保全 | フォレンジックや内部調査のための改ざん防止済み証拠 |
パスワードのチェックアウト・ローテーション
- 都度PAMから払い出されるパスワードは作業後に自動変更
- 管理者が実際のパスワードを知ることなく作業できる「パスワード隠蔽」モード
PIM(Azure)での特権ロール管理
Microsoftの Azure AD(Entra ID)では PIM という機能で特権ロールを管理します。
通常状態:
ユーザはグローバル管理者ロールを持たない
PIM でのアクティベーション:
1. ユーザがグローバル管理者が必要な作業を申請
2. PIMがMFAを要求
3. 承認フローを経て一時的にロールを付与(最大8時間等)
4. 期限切れで自動失効
SC試験での頻出ポイント
- PAMが内部不正対策に有効な理由:全操作の記録・承認フロー・共有パスワードの排除で抑止力と証跡確保
- JIT(Just-In-Time)アクセスの原則:必要なときだけ・必要な時間だけ特権を付与し、常時特権を排除
- 共有アカウントの問題:誰が何をしたか特定できず内部不正の調査が困難
- セッション録画の目的:特権操作の全記録による抑止効果と事後調査への証拠提供
- ゼロトラストとPAMの関係:「常に検証する」原則の実践として特権アクセスも都度認証・承認
よくある誤問・ひっかけパターン
誤り① 「管理者は常に管理者権限で作業すべき」→ 誤。最小権限の原則に基づき、通常は一般ユーザとして作業し、必要時のみ特権を使うべきです(JIT)。
誤り② 「PAMのVaultにパスワードを保管すれば安全」→ 不十分。Vault自体のセキュリティ(MFA・アクセス制御・バックアップ)が重要です。
誤り③ 「セッション録画はプライバシーの問題があるので実施すべきでない」→ 誤。業務目的での特権セッション録画は、就業規則・労働者への通知を前提として認められており、セキュリティ上の必要性が高い対策です。
関連用語
- ゼロトラストアーキテクチャ — 特権も含めて全アクセスを継続的に検証する
- LDAP・Active Directory — PAMはAD統合で特権管理を行うことが多い
- クラウドセキュリティ設定ミス — IAM過剰権限はPAMで管理
重要キーワード
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| PAM | 特権アクセス管理。特権資格情報の保管・払い出し・監視を行う |
| PIM | 特権IDの管理。特にAzure AD(Entra ID)でのロール管理を指すことが多い |
| JIT(Just-In-Time) | 必要なときだけ・必要な時間だけ特権を付与する原則 |
| Vault | 特権パスワードを暗号化して安全に一元管理する仕組み |
| セッション録画 | 特権セッション中の全操作を録画・ログとして保存する機能 |
| 共有アカウント | 複数人が同一の認証情報を使用すること。責任の所在が曖昧になる問題がある |